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1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。 ちょいレトロ風味の魔法譚。
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 恐る恐る、No.2の本を取り出してみた。が、表紙はしっかりと閉じている。鍵が開けられていないのを知って安堵する間もなく、ステファンは再びぞぉっとしなければならなかった。
(どのみち、ファントムを戻すには鍵を開けなけりゃいけないんじゃないか!)
 再びけたたましい笑い声が響いた。
「ファントム、鍵イラナイ。ファントム、自由」
 そういうが早いか、ステファンの手をすり抜けて書架に向かう。
「あ、こら!」
 捕まえようとしたステファンの目の前に、No.5の本がどさりと棚から落ちてきた。ファントムはその表紙に降り立つと、ニタニタ笑いを浮かべたまま吸い込まれるように消えていった。
(うそだろ?)
 ステファンは信じられない思いで「No.5」の金文字を見ていたが、しばらくすると猛然と腹が立ってきた。
「出てけよファントム! そこはお父さんの保管庫だ、君の部屋じゃない!」
 迷わずNo.5の鍵を開け、表紙を開いたステファンは息を呑んだ。
 眩い空。陽の光を反射する湖と、風に揺れる広葉樹の森――
 明らかに、父のコレクション部屋とは違う。目を閉じて頭を振り、もう一度中を覗き込んだステファンは、急にめまいを起こした。
(しまった、さっきあんな力を使ったせいだ――)
 忘れていた。学校に通っていた頃、いじめっ子に盗られた物を取り返せたとしても、その後ステファンは必ず気分が悪くなってしばらく歩けなかったのだ。
 頭の中を冷たい手で絞られるような感覚が走り、目の前が緑色になる。慌てて何かに摑まろうとしたが、伸ばした手は空を掻いて、ステファンはそのまま本の中へ落ちていった。  

 
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ワクワクしてきました!
こんばんは!
いよいよ、ステファンの冒険が始まりそうな気配がしますね。
なぜ№5の保管庫の中が、違っていたのか? №5の保管庫に誘う様に消えたファントムには、何か意図があったのか、なかったのか…気になる事がいっぱいです。

続きを楽しみにしています!
ミナモ 2007/12/16(Sun)19:04: 編集
ありがとうございます!
ミナモさんこんばんは。
そう、最初の「王者の森」は、オーリの掌の中で転がされていたみたいなものですしね。
今まで「あれ?修行は?」と思えるほどまったり過ごしていたステファンですが、やーっと自分で行動を起こしました。
いやー、ここまでが長かった(笑)

更新が思うようにいかないもので、当初の計画(んなもんあったんかいな)より大幅に遅れていますが、まあ長い目で見てやってくださいませ。


松果 2007/12/16(Sun)19:38: 編集
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趣味で始めたはずの小説にはまってしまった物書き初心者。ちょいレトロなものが好き。ラノベほど軽くはなく、けれど小学生も楽しめる文章を、と心がけています。
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