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1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。 ちょいレトロ風味の魔法譚。
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 風の音。
 木々の揺れる音。
 
 恐る恐る片方ずつ目を開けたステファンは、自分がまだ空中に居ることを知った。

(ここは?)
 不安定な姿勢のまま首を曲げて周囲を見回すと、空の一部が窓のように四角く切り取られ、そこからさっきまで居た書庫が見える。そうだ、「保管庫」の中に落ちたのだ、とステファンは思い出した。
 あの四角い窓は本の入り口だ。なぜここが別世界のようになってしまったのかは知らないが、あの入り口に辿り着けば書庫に帰れるはずだ。
 そう思って手を伸ばすのだが、身体はまるで風に煽られる木の葉のようにくるくるとして、思うように動けない。もがいているうちに、入り口は次第に遠ざかってしまった。
 
 風が吹く。ステファンは上下の感覚もなく吹き飛ばされ、気が付けば森も湖も飛び越して、岩だらけの荒れ野の上を飛んでいた。
 ふと下を見ると、岩陰に人が居る。黒髪で彫りの深い顔立ち――見覚えのある顔だった。
(お父さん!)
 ステファンは目を疑った。家に居た頃より随分若く見えるが、間違いない。オスカーは岩から岩の距離をメジャーで測り、目を輝かせて手帳に何かを書き込んでいる。
(お父さん、お父さん!)
 懸命に大声で呼びかけるのだが、遠すぎるせいか、強い風のせいか、耳には届いていないようだ。
 
 どう、と風が吹く。再び吹き飛ばされたステファンを強い太陽光が照らした。風がいやな臭いを運び、皮膚がひりひりとする。明らかにさっきとは違う場所だ。赤茶けた土の上を、銃を背負った人影が通り過ぎる――オスカーだ。ここにも父が居たことを不思議に思う暇もなく、ステファンは必死に人影を追った。
「ようオスカー、そっちは?」
 誰かに呼びかけられ、振り向いた顔を見てステファンは驚いた。さっき見た時のオスカーとは違う。顔中に髭が伸びていて、頬がこけている。
「ひどいもんだ。遺跡を銃座にしてる連中まで居たよ」
「どのみち、こんな戦争もうすぐ終わりさ。早く本国に帰って赤ん坊に会いたいだろう?」
「もちろん。もう名前も決めてある。ステファンというんだ」

 
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松果
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女性
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兼業主婦
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自己紹介:
趣味で始めたはずの小説にはまってしまった物書き初心者。ちょいレトロなものが好き。ラノベほど軽くはなく、けれど小学生も楽しめる文章を、と心がけています。
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