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1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。 ちょいレトロ風味の魔法譚。
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 本の世界にどっぷりつかっている頭の上で、突然けたたましい笑い声が響いた。ちょうどモンスターの話を読んでいた最中だったので、ステファンは心臓が止まりそうになった。
「な、な、何? だれっ?」
 笑い声の主は、道化の仮面だった。書架の最上段からニタァと笑いかけると、そのまま向こう側へ姿を消した。
(あいつは……!)
 見覚えのある仮面だ。たしか、オーリの保管庫No.2から覗いていたやつだ。ケタケタと笑う声が、書庫の中で遠くなったり近くなったりしている。どうやら独りで勝手に飛び回っているらしい。
(ファントムとかいったっけ。なんであいつが外に?)
 いやな予感がして、ステファンは急いで本をしまうと後を追いかけた。仮面は天井からの光を反射しながらひらひらと宙を舞い、時折書架の端っこに止まってステファンの様子をうかがっている。けれどステファンが手を伸ばすと、あと少しのところで逃げてしまう。
 何度も追いかけては逃げられ、さんざん走り回って、ステファンはだんだん腹が立ってきた。
(あいつめ、ぼくをからかってる! よーし見てろ)
 ステファンは目を閉じると、出来るだけ長く息を吐き出して気持ちを落ち着かせた。そのまま息を止めて意識を集中し、こらえられなくなったところで目を開くと、一気にまわりの光景が変わった。本も書架も全てが透明になり、二列向こうでゆらゆらしている仮面だけが、くっきりと見える。ステファンは大きく息を吸い、腹に力を込めて叫んだ。
「ファントム、つかまえた!」
 途端に仮面は天井に叩きつけられ、そのまま床に落ちた。
 ステファンは息を切らしながら仮面に近づき、拾い上げた。カタカタと玩具のように揺れてはいるが、仮面のファントムはもう逃げる気はないようだ。
「ごめん、力加減がわかんなかった。いじめっ子にノート盗られた時なんかに使った手なんだ」
「ケケケ、コリャ、オーリヨリ酷イ。オマエ、気ニイッタ」
 ファントムは楽しそうにつぶやいた。
「ど、どうも。ねえ、なんで外にでてるの? 君は待機中、って先生に言われてなかった?」
「ノン、ノン、ファントム、答エナイ。ファントム、知識ハ与エナイ」
 外国語なまりの妙なしゃべり方だ。ステファンは言い方を変えた。
「外に出ちゃいけないんだよ。保管庫に帰ろう」
「ウィ」
 案外素直なんだな、と思いながらステファンは奥へ向かった。さっき周りが透明になった時に壁が見えたから方向はわかっている。ほどなく“保管庫”の場所に辿り着いてから、ステファンは重大なことに気付いた。
「ファントム! 君が外に出てるってことは、No.2の鍵が開いてたってこと?」
 保管庫は危険な順に2から4まで……オーリの言葉を思い出して、ステファンはぞっとした。No.2は一番危険なんじゃないか!

 
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松果
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兼業主婦
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自己紹介:
趣味で始めたはずの小説にはまってしまった物書き初心者。ちょいレトロなものが好き。ラノベほど軽くはなく、けれど小学生も楽しめる文章を、と心がけています。
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