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1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。 ちょいレトロ風味の魔法譚。
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「ファントム!」
 ステファンの息はあがり、頭はガンガンしていた。見回すと、ここはNo.5の保管庫の中だ。
 目の前の床には一冊の分厚いノートが落ちている。ファントムはその上に降りた。
「弱虫、泣キ虫、過ギタ時間ハ戻ラナイ」
「なんだよ!」
 ノートの上からはたき落とそうとするステファンの手を、ファントムはたやすくすり抜けた。カンに障るような笑い声が響く。ステファンは構わずに、ノートを手に取った。見覚えのある文字と写真が並んでいる。
「これ、お父さんの字だ……」
 各地の遺跡を研究していたオスカーは、その記録を克明に残していた。さっきステファンが飛んでいたのはまさに、このノートに記録されている場面だ。だが最後のページに貼り付けられていたのは、遺跡ではなく、無邪気な笑顔を向ける幼いステファンの写真だった。
「他には? この続きはないの?」
 薄暗い保管庫の中には、まだ整理のついていない魔道具と共に古文書やノート類が積み上げられている。ステファンはその中にオスカーの筆跡を探した。
「探サナイホウガイイ」
 ファントムの声など無視してステファンは探し回ったが、ふと思いついて、本の山に呼びかけた。
「ステファン!」
 すぐに、何冊かが反応して光り始めた。ステファンはその光を頼りに、片っ端から本を開いてみた。
 おおかたは古い聖人の名であったり、外国の作家名であったりしたが、やがて一冊の日記帳らしい本を手にして、ステファンの動きが止まった。
「ヤメロ!」
 ファントムの声が遠ざかる。ステファンは再び、本の中に自分の意識が落ちていくのを感じた。

 
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父の背中
松果さん、こんばんは!

オスカーは、遺跡の研究をしていたのですね。
ステファンが見ていた世界は、その記録ノートの中だったとは…。
最後のページの写真には、ステファンの笑顔とは裏腹に、切なさを感じます。

家族から遠く離れた地でオスカーは、きっと事ある毎に、この写真を眺めていたのでしょうね…。

岩の上に腰かけながら、写真を眺めるオスカーが目に浮かびました。

日記帳の中には、どんな世界が待っているのか?とっても楽しみです♪
ミナモ 2007/12/26(Wed)21:46: 編集
背中、ですね
ミナモさん、いつもありがとうございます。

オスカーのイメージをそこまで膨らませていただいて感激です。
じつは、オスカーの描写は亡き父へのオマージュです。
といってもわたしの父は遺跡の研究もしてないし、戦争にも行ってないし、もちろん魔法も使えない(笑)普通の勤め人でしたが。
(ちなみに、母はミレイユとは正反対の性格ですよっ!)
父亡き後、膨大な写真やフィルムを整理していると、なんだか父の思い出を追体験するような錯覚を覚えたものです。
その体験が、「記録ノート」のくだりを書く時に大いに役立ちました。

さて、このあとステファンはどうなるのでしょう。
筆が遅くてすみません。
なんとか今年中に書庫を抜け出したいなあ……

松果 2007/12/26(Wed)22:29: 編集
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趣味で始めたはずの小説にはまってしまった物書き初心者。ちょいレトロなものが好き。ラノベほど軽くはなく、けれど小学生も楽しめる文章を、と心がけています。
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