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1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。 ちょいレトロ風味の魔法譚。
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 北向きのアトリエは、夜遅くまで灯りが消えることがない。日中の暑い時間は仕事にならないので、オーリが作品に向かうのは、大抵は陽が落ちてからだ。もっとも、最近はカンバスに向かうより机の上で羽根ペンを操っている時間の方が長いのだが。
 その夜も机に向かってひたすらペンを走らせていたオーリは、ふと気配を感じて席を立ち、窓を大きく開けてじっと闇を見つめた。中庭を挟んだ向こうの木立がざわっと揺れ、真っ赤な影が窓から飛び込む。
「おっと!」
 両腕でしっかりと受け止めたオーリは、赤い影の主に笑みを向けた。
「お帰り。次の新月まで帰らないのかと心配したよ」
「別にそれでもいいんだけど?」
 エレインは緑色の目を上げて窓の外を指差した。
「ステフの忘れ物を持って帰ってあげたわ。ちゃんと自分で洗うように言っといてね」
「忘れ物?」
「長靴よ。森の中に放りっぱなし」
「ああ、そうか……」
 オーリがそう言いながらいつまでも腕を解こうとしないので、エレインは足を思い切り踏みつけた。
「痛ったぁっ! 酷いな、足の甲ってのは骨が折れやすいんだぞ!」
「骨折くらい魔法で治せるくせに。ほら、いつまでも甘えてんじゃないの」
 恨めしげなオーリの腕を押しのけると、エレインは天井の梁の上にピョイと飛び乗った。
「相変わらず高いところが好きだね。いつになったら地上に降りてきてくれるんだろうな、わが守護天使は」
「なに?」
「いいや。人間の愚痴だ、気にしないでくれ」
 オーリは拗ねたように背を向けると、再び机に向かった。

 パタパタと廊下を駆けてくる足音がする。
「ステフ、どうした? こんな遅い時間に」
「あの、さっき窓の外に変な鳥が……ひぇっ、な、なにやってるの、エレイン!」
 梁の上で器用に寝転がるエレインの姿に、ステファンは仰天した。
「いつものことだよ。ああ見えて彼女はすごく軽いんだ、梁がたわむ心配は無いよ」
「そういう問題じゃなくて……まさか、ああやって眠るの?」
「まあね。もともと木の上で眠る種族だからな。で、何が来たって?」
「鳥です。すごく大きいやつ」
「ああ、フクロウでしょ。さっきウロウロしてたからちょっと小突いといたわ」
 眠そうな声でエレインが口をはさんだ。
「なんだって? なんで早く言わなかった、エレイン!」
「だってあんまり害は無さそうだったし」
「害どころか――ああ、ちくしょう!」
 オーリは弾かれたように外へ飛び出した。

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松果
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女性
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兼業主婦
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自己紹介:
趣味で始めたはずの小説にはまってしまった物書き初心者。ちょいレトロなものが好き。ラノベほど軽くはなく、けれど小学生も楽しめる文章を、と心がけています。
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