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1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。 ちょいレトロ風味の魔法譚。
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「ステフ、本は好きか?」
 迷路のような書架の隙間を通り抜けながら出し抜けにオーリが聞いた。
「はい!」
 ステファンは勢い込んで答えた。
「いい返事だ。じゃ、時間がある時はここへ来て、好きなだけ読むといい。君の年齢には難しすぎる本も多いけど、なあに構うもんか。書庫の鍵束は、いつでも持ち出せるように机脇に掛けておくことにしよう」
「本当ですか?」
 ステファンは目を輝かせた。実は書庫のドアを開けた瞬間から、周り中の本が誘いかけているような気がずっとわくわくしていたのだ。
「ただし、君が一人で開けていいのは‘1’の鍵だけ。保管庫、特に‘2’は危険だから、わたしと一緒の時以外は開けないこと。いいね」
 もちろん言われるまでもない。鳶色の目を輝かせながらせわしなくうなずくステファンに、オーリはずい、と顔を近づけて脅かすように言った。
「気をつけろよ。人間ってのは、これはいけません、と禁じられた領域ほど踏み込みたくなるんだ。おとぎ話にもよく居るだろう、タブーに触れてとんでもない結果を招く主人公が」
「ぼく、絶対開けませんから!」
 ステファンは宣誓をするように片手を挙げた。こうして間近で覗き込まれると、オーリの水色の目は結構怖い。心の底まで見透かされそうで、冷や汗が出る。
「わかればよろしい、君の好奇心と探究心に期待してるよ」
 オーリは何やら含みのある言葉を言いながらドアを開けた。
 風と一緒に、庭のハーブの香りが吹き込んでくる。ステファンは振り返り、つくづくと書庫を見た。人一人が通り抜けられるほどの細いドアの横は、すぐ階段になっている。外から見る限り書庫スペースは本当に狭いはずなのに、中のあの広さときたら……オーリが取引したという魔物がどんな奴なのか、ちょっと見てみたい気がした。
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松果
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兼業主婦
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自己紹介:
趣味で始めたはずの小説にはまってしまった物書き初心者。ちょいレトロなものが好き。ラノベほど軽くはなく、けれど小学生も楽しめる文章を、と心がけています。
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