忍者ブログ
1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。 ちょいレトロ風味の魔法譚。
[57]  [58]  [59]  [60]  [61]  [63]  [64]  [66]  [69]  [93]  [92
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


 ステファンが起きて歩き回れるようになった頃、一通の手紙が届いた。
「お母さんからだ!」
 明るい出窓のそばに陣取り、ステファンは食い入るようにして手紙を読み始めた。ミレイユの文字は相変わらず几帳面で細かい。文面を目で追ううちにステファンの顔つきは真剣になり、けれどやがて笑い出した。
「先生、みてよこれ」
 ステファンは笑いながら、居間でお茶を飲むオーリに手紙を差し出した。
「“わたしの大切なステファンへ どうしても言っておかなければならないことがあります、驚くとは思いますが冷静に読むように”……これ、わたしが読んでもいいのかな?」
 ステファンはまだ笑いながらうなずいている。手紙の続きを読み進めたオーリは、うーん、とうなった。
 そこにはミレイユの兄姉の“妙な力”のことが、まるで重大な秘密を告白するかのように綴られてあった。しかもミレイユ自身はなぜかそのことをしばらく忘れていたというのだ。
「これによると、お母さんは君が保管庫で見たのとそっくり同じ光景を夢で見て、昔を思い出した、ってことだね。しかも日付は三日前……ステフが書庫から出てきた日じゃないか」
「ね。おかしいよね。でも、伯父さんたちのことならぼくもう知ってるよ、って言ったらお母さんどんな顔をするかな?」
 おかしそうに笑うステファンの顔を見ながら、オーリは感嘆するように言った。
「不思議なものだね。ステフ、君のお母さんは魔力なんてなくても、ちゃんと君と心がつながってるんじゃないか」
「でもさ、お母さんたら、自分からリコンを言い出したくせにお父さんに言った言葉まで忘れてたっていうんだから呆れるよね。ぼく、あんなに泣いて損しちゃった」
「忘れた、か。ああもしかしたら!」
 オーリはパシッと手紙を指で弾いた。
「ステフ、これはもしかしたらオスカーとつながるかもしれないぞ」
「どういうこと?」
「これは多分、忘却魔法のひとつだ。相手が眠っているあいだに掛ければ、特定の言葉や出来事に関する記憶を忘れさせることができる。オスカーは独力で魔法を使えたわけじゃないけど、魔道具を使いこなすのは上手かったから、不可能ではないはずだ」
「お父さんがお母さんに魔法を掛けたってこと? そんな道具があるの?」
「だめだよ、保管庫に探しにいこう、なんて思ったら。それにあくまでこれは憶測なんだから」
 オーリはステファンの心を見透かしたようにたしなめた。
「でも確かにおかしいとは思っていたんだ。君の話によれば、昔ミレイユさんはオスカーに向かって“兄たちのようにはさせない”と言ってたそうじゃないか。つまりその頃は、ステフの力をはっきり“魔力”だと認めて恐れてたってことだ。けど、思い出してごらん。君の弟子入りの話をした時はそんな態度じゃなかった。漠然と不愉快には思ってても、君の力がなんなのか、わかってない様子だったろう」
「じゃあ、ええと」
 ステファンはこんがらがりながら、懸命に思い出そうとした。

 
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ 
読んでいただいてありがとうございます。応援していただけると励みになります。
 
PR

Comment
Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
母子って
本当に不思議なものですよね~。

目に見えない何かが、つながっている気がします。
私も、自分が母となって気付きましたけど。

オスカーの意図、ミレイユの戸惑い。

どの謎も、ステファンの成長に大きく役立ってくれそうですね♪
楽しみです!
ミナモ 2008/01/16(Wed)14:26: 編集
ですね~
わたしも思います。母子って不思議。
よくへその緒に例えるんですけど、理屈で説明できないところでつながってるみたいですね。(子供らは、迷惑じゃ!と言ってますが)

ミレイユの人物像については、冒頭で随分薄っぺらな教育ママみたいに書いてしまったんですが、彼女なりの理由があってあんな言動してたんだよぉ~とどこかで書きたかったんです。
さて、これがオスカーの謎とうまくつながってくれますかどうか(笑)
松果 2008/01/16(Wed)19:16: 編集
カレンダー
10 2017/11 12
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
最新記事
最古記事
ブログ内検索
プロフィール
HN:
松果
HP:
性別:
女性
職業:
兼業主婦
趣味:
読書・ネット徘徊
自己紹介:
趣味で始めたはずの小説にはまってしまった物書き初心者。ちょいレトロなものが好き。ラノベほど軽くはなく、けれど小学生も楽しめる文章を、と心がけています。
バーコード
最新コメント
[09/24 松果]
[09/24 松果]
[09/24 松果]
[09/24 ミナモ]
[09/24 松果]
カウンター
アクセス解析
フリーエリア
最新トラックバック
忍者ブログ [PR]