1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。
ちょいレトロ風味の魔法譚。
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駅を出てしばらく歩いた後、突然エレインはオーリの腕を振り払った。
「なんで黙って見てたの、なんであたしに殴らせなかったの! あんな男、首をへし折ってやればよかったんだ!」
両手のこぶしを握り締め、緑色の炎を宿した目を光らせている。
「ああ、いいね。奴のだぶついた首をへし折ったら、さぞいい音がするだろ」
オーリは憮然としたままで答えた。
「そして? 君は捕らえられて処分されるのか? それとも管理区行きか?」
「知らないよ、そんなこと!」
風がエレインの帽子をさらっていった。白い花飾りがちぎれ、砂ぼこりにまみれる。
「あの子を見たでしょう? 禁じられた呪詛の言葉を言おうとしていた。 まだ子供なのに! 相手を呪うことで、自分も命を落とす罰を受けるのに! どんな思いでそうしたかわかる?」
呪詛。そうだ、あの時少年の口元が動いていたのはそのためか。ステファンは思い出してぞっとした。
「わかるさ。だからわたしが止めた。駅という公共の場所で魔法を使った、そういう意味じゃ、あの男と同罪になったけどね」
「嘘だ、人間にはわからない。奪う側の奴になんか、わかるわけない!」
言い捨ててエレインは早足で歩き出した。オーリが後を追う。
「エレイン、どこへ行く? 家はそっちじゃないだろう」
「誰の家よ?」
肩を捉えた手が払いのけられる。
「竜人の居場所なんてもうどこにも無い。契約という鎖に縛られて、魔力を与えられなければ生きていけない化け物、ええそうよ!」
赤毛を跳ね上げたエレインは、手袋に気付くと、忌々しげにむしりとって地面に叩きつけた。
「こんなもの!」
オーリは眉をひそめると、走り出したエレインに杖を向けた。光の輪に捕らえられ、エレインはびくっと立ち止まった。
「頭を冷やすんだ、守護者どの。君はさっきの少年の怒りに影響されてる」
オーリは大きな歩幅で追いついた。それを肩越しに振り返る緑の目に、怒りに満ちた光が揺れる。
「エレイン、一緒に帰ろうよ。風が冷たくなってきたよ、雨がふるかもしんない」
走って追いついたステファンは、懇願するようにエレインの手を引っ張った。
けれどエレインが怒りを収める様子は無い。緑色の目をますます大きく開いて、オーリを睨み据えた。
「そう。こうやって、竜人を狩ったんだ」
凍りつくような声だった。オーリが顔色を変えた。
「こうやって動きを封じて! 神聖な新月を狙って攻め込んだんだ、人間は!」
「それは……」
「あたしは知っている。魔法使いは竜人狩りの尖兵だったんだ!」
幾筋もの閃光が、雲の上で走った。
いつの間にか雷雲が空に満ちている。
竜人狩り? 尖兵? エレインの言っている意味がわからずステファンはオーリに問うように目を向けた。
青ざめた顔のまま、オーリは乾いた声で答えた。
「そうだ。その通りだ」
↑読んでいただいてありがとうございます。応援していただけると励みになります。
「なんで黙って見てたの、なんであたしに殴らせなかったの! あんな男、首をへし折ってやればよかったんだ!」
両手のこぶしを握り締め、緑色の炎を宿した目を光らせている。
「ああ、いいね。奴のだぶついた首をへし折ったら、さぞいい音がするだろ」
オーリは憮然としたままで答えた。
「そして? 君は捕らえられて処分されるのか? それとも管理区行きか?」
「知らないよ、そんなこと!」
風がエレインの帽子をさらっていった。白い花飾りがちぎれ、砂ぼこりにまみれる。
「あの子を見たでしょう? 禁じられた呪詛の言葉を言おうとしていた。 まだ子供なのに! 相手を呪うことで、自分も命を落とす罰を受けるのに! どんな思いでそうしたかわかる?」
呪詛。そうだ、あの時少年の口元が動いていたのはそのためか。ステファンは思い出してぞっとした。
「わかるさ。だからわたしが止めた。駅という公共の場所で魔法を使った、そういう意味じゃ、あの男と同罪になったけどね」
「嘘だ、人間にはわからない。奪う側の奴になんか、わかるわけない!」
言い捨ててエレインは早足で歩き出した。オーリが後を追う。
「エレイン、どこへ行く? 家はそっちじゃないだろう」
「誰の家よ?」
肩を捉えた手が払いのけられる。
「竜人の居場所なんてもうどこにも無い。契約という鎖に縛られて、魔力を与えられなければ生きていけない化け物、ええそうよ!」
赤毛を跳ね上げたエレインは、手袋に気付くと、忌々しげにむしりとって地面に叩きつけた。
「こんなもの!」
オーリは眉をひそめると、走り出したエレインに杖を向けた。光の輪に捕らえられ、エレインはびくっと立ち止まった。
「頭を冷やすんだ、守護者どの。君はさっきの少年の怒りに影響されてる」
オーリは大きな歩幅で追いついた。それを肩越しに振り返る緑の目に、怒りに満ちた光が揺れる。
「エレイン、一緒に帰ろうよ。風が冷たくなってきたよ、雨がふるかもしんない」
走って追いついたステファンは、懇願するようにエレインの手を引っ張った。
けれどエレインが怒りを収める様子は無い。緑色の目をますます大きく開いて、オーリを睨み据えた。
「そう。こうやって、竜人を狩ったんだ」
凍りつくような声だった。オーリが顔色を変えた。
「こうやって動きを封じて! 神聖な新月を狙って攻め込んだんだ、人間は!」
「それは……」
「あたしは知っている。魔法使いは竜人狩りの尖兵だったんだ!」
幾筋もの閃光が、雲の上で走った。
いつの間にか雷雲が空に満ちている。
竜人狩り? 尖兵? エレインの言っている意味がわからずステファンはオーリに問うように目を向けた。
青ざめた顔のまま、オーリは乾いた声で答えた。
「そうだ。その通りだ」
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Comment
ああ~!!(><)
エレイン~!!落ち着いて!
しかし痛い、いたい歴史です~(><)
前回のもうう、と思ったけど、歴史はもっと悲惨…
オーリはどうするんだろう!ステフが上手く間には入れたらいいのに…どきどきです!
しかし痛い、いたい歴史です~(><)
前回のもうう、と思ったけど、歴史はもっと悲惨…
オーリはどうするんだろう!ステフが上手く間には入れたらいいのに…どきどきです!
らんららさんへ
はい、前回に引き続き、痛いシーンです。
汽車の中ではホンワカいいムードだったのに、
持ち上げといてズド~ン!
……物語にお約束のパターンですね、ごめんねオーリ。
全体的にほんわかまったりのお話ですが、痛い歴史も書かなきゃいけない。わかっちゃいるけど、実際書くのは辛いですね。
次回オーリに言い訳(?)させる台詞があまりに説明口調で話しの流れが止まってしまうんで、今推敲し直してるところです…
エレインの怒りはおさまりそうにありませんね。
ステフ、出番だぞ~!
汽車の中ではホンワカいいムードだったのに、
持ち上げといてズド~ン!
……物語にお約束のパターンですね、ごめんねオーリ。
全体的にほんわかまったりのお話ですが、痛い歴史も書かなきゃいけない。わかっちゃいるけど、実際書くのは辛いですね。
次回オーリに言い訳(?)させる台詞があまりに説明口調で話しの流れが止まってしまうんで、今推敲し直してるところです…
エレインの怒りはおさまりそうにありませんね。
ステフ、出番だぞ~!