1950年代の欧州風架空世界を舞台にしたファンタジー小説です。
ちょいレトロ風味の魔法譚。
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「大叔父様か。 来月誕生パーティをするとかいってたな」
「ああ。パーティは我慢するとしても苦手だな、あの人は……トーニャも人が悪いよ、こんなペンダントを渡してわざと大叔父に会わせようとしてるんじゃないだろうな」
「嫌なら手を引きなさい、駄々っ子」
トーニャはぴしゃりと言った。
「あなたはオスカーの身内でも親族でもないんじゃないの。中途半端に騒ぎ立てて、折角チャンスを提供してあげても“苦手”とか言って逃げ腰になるんなら、いっそもう関わらないほうがいい。ステファンだって迷惑でしょうよ」
「そんな!」
焦って立ち上がったステファンを手で制して、トーニャは続けた。
「オーリ、あなたはなぜオスカーを探しているの。親友だから、ステファンの父親だから、義務感で?」
「違う。心配でやむにやまれないからだ、他に何がある!」
キッと睨んで言い返すオーリの周りで、青い火花が散る。
「そう、やむにやまれない力、わたしたちはいつもそれに動かされている。だったら、自分のプライドになんかこだわってる場合じゃないでしょう」
ステファンは息をつめてオーリを見上げた。
青い火花はもう収まっているが、オーリは何か迷うように、テーブルに視線を落としている。
「気軽に考えろよ。僕は行くつもりだぜ、そのパーティとやらに」
ユーリアンが足を組み替えながら明るく言った。
「おい本気か?」
「本気もなにも。トーニャを一人で行かせるわけにはいかないだろう。ああ、君たち北方移民の一族が植民地出身の僕を快く思っていないことくらい知ってる。結婚する時だってボロクソに言われたしね。だからって何だ? 僕だってれっきとしたソロフ師匠の弟子だ、北も南もあるか。悪口と嫌味の集中砲火を浴びたって、命まで取られるわけじゃあるまい」
快活な笑い声が部屋に響いた。褐色の笑顔に白い歯が形よく並ぶ。トーニャは同志を見る目つきで夫に微笑み、オーリに向き直った。
「どうするの? ここであきらめるのも自由よ」
「まさか」
オーリはひきつった笑みを浮かべた。
「オスカーのためだ。ここまで来てあきらめられるか。ああ、行こう、大叔父に会いに」
ステファンはホッとして一同を見回した。
「ありがとう……」
「おいおい、礼を言うのは早いぜ。まだ何も解決してないんだから。オーリ、当然お前はエレインと一緒に参加するよな? ちゃんと正装しろよ」
「え、エレインと?」
オーリはお茶を飲もうとしてむせかえった。
「パーティには女性をエスコートして行くのが常識だろうが。ああ今から言っておくか? おおーいエレ……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
再び赤くなってオーリが立ち上がった。
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「ああ。パーティは我慢するとしても苦手だな、あの人は……トーニャも人が悪いよ、こんなペンダントを渡してわざと大叔父に会わせようとしてるんじゃないだろうな」
「嫌なら手を引きなさい、駄々っ子」
トーニャはぴしゃりと言った。
「あなたはオスカーの身内でも親族でもないんじゃないの。中途半端に騒ぎ立てて、折角チャンスを提供してあげても“苦手”とか言って逃げ腰になるんなら、いっそもう関わらないほうがいい。ステファンだって迷惑でしょうよ」
「そんな!」
焦って立ち上がったステファンを手で制して、トーニャは続けた。
「オーリ、あなたはなぜオスカーを探しているの。親友だから、ステファンの父親だから、義務感で?」
「違う。心配でやむにやまれないからだ、他に何がある!」
キッと睨んで言い返すオーリの周りで、青い火花が散る。
「そう、やむにやまれない力、わたしたちはいつもそれに動かされている。だったら、自分のプライドになんかこだわってる場合じゃないでしょう」
ステファンは息をつめてオーリを見上げた。
青い火花はもう収まっているが、オーリは何か迷うように、テーブルに視線を落としている。
「気軽に考えろよ。僕は行くつもりだぜ、そのパーティとやらに」
ユーリアンが足を組み替えながら明るく言った。
「おい本気か?」
「本気もなにも。トーニャを一人で行かせるわけにはいかないだろう。ああ、君たち北方移民の一族が植民地出身の僕を快く思っていないことくらい知ってる。結婚する時だってボロクソに言われたしね。だからって何だ? 僕だってれっきとしたソロフ師匠の弟子だ、北も南もあるか。悪口と嫌味の集中砲火を浴びたって、命まで取られるわけじゃあるまい」
快活な笑い声が部屋に響いた。褐色の笑顔に白い歯が形よく並ぶ。トーニャは同志を見る目つきで夫に微笑み、オーリに向き直った。
「どうするの? ここであきらめるのも自由よ」
「まさか」
オーリはひきつった笑みを浮かべた。
「オスカーのためだ。ここまで来てあきらめられるか。ああ、行こう、大叔父に会いに」
ステファンはホッとして一同を見回した。
「ありがとう……」
「おいおい、礼を言うのは早いぜ。まだ何も解決してないんだから。オーリ、当然お前はエレインと一緒に参加するよな? ちゃんと正装しろよ」
「え、エレインと?」
オーリはお茶を飲もうとしてむせかえった。
「パーティには女性をエスコートして行くのが常識だろうが。ああ今から言っておくか? おおーいエレ……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
再び赤くなってオーリが立ち上がった。
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